現在歯科衛生士として働いている方、これから歯科衛生士として働く予定の方。
歯科衛生士として働いていくなかで、国民年金と厚生年金はどっちがお得なんだろう?
そんな疑問をお持ちではないですか?
はじめに言ってしまいます。歯科衛生士として働くなら「厚生年金」がお得です!!
ただし、歯科衛生士が厚生年金に入るには少々ハードルが高いことも。
ぜひこの機会に年金について学んでみませんか?
国民年金と厚生年金の違い
そもそも国民年金と厚生年金では何が違うのか。ここではさまざまな面から国民年金と厚生年金の違いを解説していきます。
国民年金と厚生年金の制度の違
年金には「国民年金」と「厚生年金」があります。
年金制度 | 内容 |
---|---|
国民年金 | 日本の20歳以上60歳未満の人が必ず加入する年金 |
厚生年金 | 国民年金に上乗せして将来もらえる金額を増やすための年金 |
つまり、携帯料金でいうところの、国民年金は全員が加入する基本料金。厚生年金はさらに追加で保障を手厚くするためのオプションのように考えてもらうと分かりやすいですね。
ちなみに厚生年金に加入すると保険料には、国民年金の保険料も含まれているので別途で納める必要はありませんよ!
出典:日本の公的年金は「2階建て」|一緒に検証!公的年金|厚生労働省
国民年金と厚生年金の保険料の違い
国民年金と厚生年金には保険料にも違いがあります。
国民年金
保険料:全国一律
負担者:全額被保険者(=あなた1人)
厚生年金
保険料:所得に応じて保険料が決定
負担者:被保険者と雇用主で折半(=半分は勤めている会社が払う)
国民年金の保険料は一律です。給与が高かろうが低かろうがみんな同じになります。
一方で厚生年金の場合は、給与の額に応じて保険料が変わります。また、保険料についても勤めている会社が保険料の半額を負担してくれます。
どういうことかというと、
仮にあなたの給与が22万円だったとします。
この場合、あなたが負担する保険料は
国民年金 16,590円(令和4年度)
厚生年金 40,260円
となりますが、厚生年金の場合は、あなたが勤めている会社が半額を負担するので、
実際にあなたが負担する保険料は
国民年金 16,590円
厚生年金 20,130円
となります。(令和4年度計算)
あれ?厚生年金のほうが払う金額多いやん!と思ったそこのあなた。
はい、正しいです。厚生年金のほうが保険料の負担が半額にしても国民年金より多くなります。そのため、同じ給与だった場合、保険料を引かれた手取りとしては厚生年金のほうが低くなってしまいます。
じゃあ、国民年金のほうがいいのでは?と思ったそこのあなた!
本題はここからですよー。
参考:厚生年金保険料額表|日本年金機構
国民年金と厚生年金の平均受給額の違い
令和元年度の月の平均年金受給額は
国民年金が6.5万円、厚生年金が14.9万円
となっています。
実に約8.4万円も厚生年金を納めていた人のほうが高い年金受給額になります。厚生年金のほうが、納めるときに多く払っている気分になるかもしれませんが、実際はそれにプラスして会社側もあなたの保険料を納めていることになります。その分、年金をもらうときに大きな違いがあることは分かってもらえましたか?
参考:年金制度の仕組みと考え方|厚生労働省
国民年金と厚生年金の保障内容の違い
受け取る年金には3種類あります。
・老齢年金(65歳以上になってから受け取る年金)
・障害年金(年金加入中の病気や事故によって障害を負った場合に20~64歳の現役世代の人も受け取ることができる年金)
・遺族年金(年金加入者が亡くなられた場合に遺族が受け取る年金)
これらの年金を受け取る際の金額や受け取ることができる人、障害の範囲などの保障内容が国民年金より厚生年金のほうが手厚くなっています。
1、老齢年金
【厚生年金との違い】
・厚生年金の上乗せ分、多く支給される。
2、障害年金
【厚生年金との違い】
・厚生年金の上乗せ分、多く支給される。
・厚生年金は障害等級3級までを支給対象とする。
(国民年金のみ加入している場合は1,2級までが支給対象)
・厚生年金は、障害等級3級未満の軽い障害が残った場合、障害手当金(一時金)がもらえる。
(国民年金には障害手当金の制度がない。)
3、遺族年金
【厚生年金との違い】
・厚生年金の上乗せ分、多く支給される。
・遺族厚生年金は受け取ることができる人の範囲が幅広い。配偶者、子供、父母、孫、祖父母のいずれかに支払われる。(遺族基礎年金は配偶者または子どものみ)
参考:障害年金|日本年金機構
歯科衛生士が厚生年金に加入するハードル
歯科衛生士が厚生年金に加入するには実はハードルがあります。
ここでは歯科衛生士が厚生年金に加入しにくい理由と対処方法を紹介します。
厚生年金に加入する歯科衛生士の数
令和2年に日本歯科衛生士会から発表された「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によると常勤歯科衛生士の62.6%が「厚生年金」に加入していると回答しました。しかし、歯科衛生士全体でみると、この数字よりもっと厚生年金へ加入する歯科衛生士は少ないでしょう。
参考:令和2年3月 歯科衛生士の勤務実態調査報告書|公益社団法人 日本歯科衛生士会
まず、ここで一つご注意を。診療所は「厚生年金」に加入しているところが少ない!!
この調査結果だけ見ると半分以上は「厚生年金」じゃん!という印象ですが…
実際は「厚生年金」加入者の割合はもっと少ないことが予想されます。
実はこの調査の回答者で診療所勤務の方は48.2%しかいないのです。
つまり、半数以上が病院や公務員などの診療所以外で働く歯科衛生士による回答です。
歯科衛生士の9割が診療所で働いている日本。そのため、この調査結果は必ずしも実態を表していない可能性があります。
厚生年金に加入している歯科診療所が少ない理由
厚生年金の強制加入の対象にならない歯科医院が多いため、小規模の歯科医院では厚生年金に加入していないケースが多いです。
診療所で「厚生年金」に加入しているところが少ないのには理由があります。「厚生年金」は元々、常時雇用する社員が5人以上だと強制加入になりますが、それに満たない場合は任意加入になります。つまり、職員の少ない規模の診療所では「厚生年金」に加入していないことが多いのです。
歯科衛生士が厚生年金の加入するには
歯科衛生士で厚生年金に入りたい場合はハードルが高くなります。厚生年金に加入するためには、次の方法が考えられます。
●病院や行政などの診療所以外のところで働く
●厚生年金に加入している規模の大きい診療所で働く
会社が厚生年金に加入していない場合は、国民年金に個人で加入しないといけません。その場合は、給与から保険料が引かれることを踏まえて就業先を検討しましょう。
まとめ
厚生年金のほうが月の保険料は、国民年金よりも高くなります。しかし、次の理由から厚生年金のほうがお得だと言えます。
ただし、実際のところ厚生年金に加入している診療所が少ないため、歯科衛生士の厚生年金への加入が難しい場合もあります。
厚生年金に加入できない場合は、国民年金に加入することになります。そのときは、厚生年金がない分を考慮したうえで給与を見て、就業先を検討することをおすすめします!